客が東北の地酒を店に持ち込んでキープしてもらう仕組みを提案したのは、相模原市に住む訪問看護師の五十嵐直敬さん(39)。両親が福島出身で、甚大な被害を前に「経済を回すことで支援を」と短文投稿サイト「ツイッター」などで呼び掛けた。
「これこそ、外食産業に携わる自分の務め」。ツイ友で橋本や平塚、町田などで居酒屋5店舗を経営する「山路フード」(大和市)の伊原木智広常務(39)が素早く反応、15日から企画をスタートさせた。
キープ料は100cc当たり100円で、一升瓶なら1800円、四合瓶なら700円。飲食店での販売価格は仕入れ値の3倍程度といわれており、客側にとっては購入費込みでも3、4割安くなる計算だ。
「ゆるり。」町田店では既に4組が「一ノ蔵」(宮城県大崎市)などをキープ。伊原木常務は「東北の蔵元は約250あるが、店で扱えるのは20程度。お客さまに持ち込んでもらうことで、より多くの蔵元を支援できる」と期待する。「たくさんのことはできないが、これなら」と故郷の地酒を持ち込む常連客もいるという。
五十嵐さんは「計画停電や宴会自粛で売り上げが減少する飲食店支援にもつながる」と話す。
小田急線相模大野駅北口近くの居酒屋「ガクさん」でも、五十嵐さんの提案もあって今月から、常連客を中心に岩手、宮城、福島3県の地酒の持ち込みキープを始めている。四合瓶、五合瓶のみだが、店側は「お酌代」として1杯ごとに200円を計上。これまでに6組が「浦霞」(宮城県塩釜市)などをキープ、刺し身などのお薦め料理と一緒に味わっているという。
「飲むことが一番の支援。生産者とお客さまの心をつなぎたい」と田中修社長(50)。25日から本格的に企画をPRする予定で、他の支援企画と併せ、売り上げの一部を義援金として寄付する考えだ。
被災地に経済的な二次被害をもたらさないために、うまい地酒と料理でチャリティーを―。五十嵐さんは、そう呼び掛けている